躁の人、真夜中まで起きてます。
タコ氏は、普段の日は大体、22時頃には、
「おやすみ」と言って、和室に引っ込み、暗がりの中でイビキをかく。
ところが、昨夜、真夜中になっても、閉まった和室の扉の向こうから、クラッシック音楽が、ガンガンと流れていたんで、
「あの人、もう、音楽つけたまま寝ちゃったんじゃないの?」と、ポンは言った。
「ちょっと、あんた。見ておいでよ。寝てたら、こっそり消してきなよ」
「嫌だよ!」って、タコ氏は怒鳴った。
だって、寝てるタコ氏って怖い。タコ氏はマイスリーだの何だの、睡眠薬をたっぷり飲んでる。でも、睡眠薬を飲んだ状態で、フラリと起きてくる人って、目の焦点が合っていなくて、すっごく怖いんだよね~。だから、寝てるタコ氏にできるだけ近づきたくない。それ、私の希望。
「でも、電気代がもったいない。近所迷惑にもなるし」と、ポン。
「でも、窓閉まってるよ。外には聞こえてないよ」と、私。
「でも、電気代がもったいない」
ポンは、扉のスキマに目をこらし、
「電気もついてる! 電気つけっぱなしで、音楽つけっぱなしで寝てるなんて、電気代、もったいなすぎる!」と、騒ぎ立てた。
「私が電気を消すから、あんたが、音楽を消すのよ」
そんな役割分担までふってくる。ゲー。
結局、二人で、おそるおそる扉を開けたら、タコ氏は、バッチリ目を覚ましていて、ひじかけ椅子に座り込み、コウコウと光る電気の中で、スピーカーをにらみつけ、音楽を聴いていた! ウワア! 起きてる!! こんな真夜中まで! そんなこと、普通はないのに!
「ゲッ! 起きてた!」と、私達が驚いたら、
「何? 何ですか。何か迷惑かけてますか」
タコ氏、さっそくキレてつっかかる。
「いえ」と、私、遠くに逃げる。
「うるさいです」と、ポンは言ってから、風呂場へと逃げていく。
そしたら、タコ氏は、
「うるさいのは謝ります。だけど、そんなにうるさいですか! 音、気を付けてるつもりなんだけど! はっきり言って、聞こえないはずなんだけど!」
と、ズカズカとリビングに入ってきて、私のそばまで迫ってきて、
「聞こえる? 今! 音、聞こえないっしょ!」とキレながら、怒鳴った。
私、これ以上できないくらい、壁のすみっこに逃げていたけれども、
「聞こえます。すっごく聞こえます。うるさいです」と言ってやった。
「あなたが、そんなに耳がいいとは知りませんでした。ヘエ」
と、タコ氏はひっこんでいって、その後、音は小さくなったけど、ヤレヤレ。いつまで起きてるのやら! いつまでも起きてるのって、これ、双極性障害の躁の症状。