愉快な精神病家族

双極性障害&アルコール依存症になりかけ!?のオジサン&パニック障害の奥様&経済力無しのアラサー&怖がり犬のドタバタ生活

実際は、何も起こらないかもしれないことは、全力で想像しない。

 今日、タコ氏が午後に心療内科のY先生の所に行くっていうんで、
「それなら、私はタコ氏より先回りして、Y先生に、ヤツが躁状態でおかしいってこと言わなくちゃ」と、ポンはうめいた。

「病院に行くの面倒くさい。だけど、ヤツがおかしいってこと言わなきゃいけない。違う?」
「違わない。行かなきゃいけない。一緒に言ってあげようか?」と、私が聞くと、
「一人で行くわよ~。時間がもったない」と、ポンはしかめつらで出かけて行った。

 そして、戻ってきて、
「Y先生ね、タコ氏が真夜中まで目を見開いて、音楽を聴いてますって言ったら、すごいあわてて、カルテに書き込んでた」と言った。
「本人が、自分は躁状態だってことを自覚できたらいいらしいんだけど、タコ氏は、多分、自分が躁状態だってことを自覚できていないでしょうって」
 躁状態の後には、必ず、でっかいウツ状態がやってくるので、
「薬で調整します」ってY先生は言ったらしい。それで、おさまるといいんですが。

 

 アルコール依存症の問題については、
「この間、本人に言いました。このままだったら、アルコール依存症になりますよって。だけど、お酒の問題に関しては、あの人はとても頑固です。あれは、大変なことになるかもしれませんよ」
 そう言って、Y先生はムズカシイ顔をしたそうだ。

 なんでも、タコ氏は、ビールを飲むのは自分の生き方だとかって言ったらしい。
「生き方だか、何だか知らないけど、家族に迷惑がかかるじゃないの!とんでもないわ!」

と、ポンは怒鳴った。

    でも、アルコール依存性になっちゃうと、家族に迷惑がかかるから、お酒を飲むのはもうやめようって、そういう発想にはならないんだそうだ。

    その逆。お酒を飲むためには、何だってやる。家族が嫌がるなら、家族と別れる。仕事がクビになっても、やっぱりお酒を飲み続ける。どんな理由をつけてもお酒を飲む。それが、アルコール依存症っていう病気なんだそうだ。
 家族よりも、仕事よりも、人生よりも、何よりも、お酒。そうなるなんて怖い。
 恐ろしい妄想が、次々に頭を駆け巡って、背筋がゾーッと寒くなる。
「Y先生の後ろに本棚があってね。その本棚に、アルコール依存症とかって題名のついた本もあるわけよ。だから、Y先生も、アルコール依存症について知らないわけじゃないんだなって、そう思うわけじゃない? そういう人が、あの人は、かなり頑固です。大変なことになるかもしれませんよって、怖い顔をして言うんだもの。私、どんな恐ろしいことになるんだろうって、すっかり気が滅入っちゃった」 
 ポンはそう言って、暗い顔をして、
「あの人とやっていけるかしら。いつか、ムリになるかもしれない」
と、陰気な顔をして、そんな暗い予想を立てた。

 この先、どうなるかわからない。アルコール依存症っていうのは、恐ろしい病気だとも聞くから、ホントに恐ろしいことになるかもしれない。
 でも、ならないかもしれない。だって、恐ろしいことにならないために、心療内科の先生ってもんがついているのではないか? そうでしょう!
 そうだ。だから、恐ろしい妄想はやめよう。
 例えば、タコ氏が、外でお酒を飲んできて。そこでキレて、誰かにつっかかって、ケンカして、警察沙汰になって、家族が呼ばれて、ポンが泣いて、私が出頭して…とか。
 それとも、お酒を飲んで、夜中に突然キレて、2階に上がってきて、私の首をしめ、私はバッタリ倒れて意識を失い、ポンは泣き、マメコバアバと、タヌキジジイは、あわてふためき、Cちゃんは不安がり……とか。
 そんな妄想はやめよう。ついつい、そんなことを考えちゃうけど、そんな妄想は、全力でしないように頑張ろう。だって、そんな恐ろしいことは、全然起こらないかもしれないんだから! 実際は、何も起こらないかもしれないんだから!