愉快な精神病家族

双極性障害&アルコール依存症になりかけ!?のオジサン&パニック障害の奥様&経済力無しのアラサー&怖がり犬のドタバタ生活

ポンの怒りと掃除機事件

 朝から、ポンはタコ氏のサンダルのことで怒っている。
 本人がいるところで怒っているのではない。タコ氏が会社に行ったのち、私とCちゃんしかいないところで怒っているのだ。で、何を怒っているのかっていうと、タコ氏が昨日、買ったサンダルが、とんでもなくヘンテコリンだっていうことを、モウレツ怒っているのだ。
「そりゃ、古いサンダルがあんまり汚いから、新しく買ってって言ったわよ‼ でも、だからって、何だって、こんなヘンなもんをわざわざ買ってくるんだろう! 頭おかしいんじゃないの。こんなトイレスリッパみたいなヤツ!」
 ポンは、ナイキのマークがでっかくくっついたゴムのつっかけみたいなヤツをにらんで、怒鳴り散らした。
「こんなものはいて、Cちゃんの散歩に来ないでほしいんだけど! どこも出歩かないでほしいんだけど! いいわ。言うわ。わたし、タコ氏に文句言ってやる!」と、ポンは、えらい勢いだ。
 でも、古いサンダルをはいて出歩くのもダメで、新しいつっかけをはいて出歩くのもダメだったら、いったい、なにをはいて、タコ氏に出歩けというのだろう。
「今度の休みの時に、私がタコ氏と買いに行きますよ」
 ものすごい犠牲的な顔をして、そんなことを言ったけどさ。でも、サンダル買いなおしてなんて、ポンが言いだしたら、タコ氏、ものすごくキレるだろうな。
「やめなよ。いいじゃん。タコ氏が何をはいていたって。トイレスリッパをはいておきたいなら、はかせておけばいいじゃん」って、私が、ポンに言ったら、
「ダメよ! 私は我慢ならない! 断じて我慢なりませんからね!」

と、ポン、えらい剣幕。
「タコ氏、きっとキレるよ」って、今度は、そう言っておどかしてみたら、
「なーに。怒らないわよ」と、ポンは言ったけど、その自信、どこから出てくるんだろう。ああ、もしかしたら、ポンは、タコ氏を怒らせるのを恐れていないのかもしれない。だとしたら、うらやましい。

 

 タコ氏がキレるといえば、タコ氏がキレたことで、一つだけ役立った(?)こともあった。
 うちの掃除機、コードレスのヤツ。3年前に買ったヤツなんだけど、ずっとすごくおかしかったのだ。全然吸い込まない。すぐに勝手に止まる。絨毯の上のホコリなんて、全く取れない。ここ最近、ますますひどくなっていたのだ。
 で、それを珍しく手に持って、自分が寝室に使っている和室を掃除したタコ氏は、
「あのさあ。文句言いたくはないけどさあ! なーんで、こんなもん買ったの!」
と、ポンに向かって、キレて怒鳴ったのだ。
「何でって。その掃除機を買った時には、あなたもいましたけど?」
 ポンが言ったら、タコ氏は沈黙した。すると、ポンは、怒りのスイッチを入れられたみたいに、タコ氏に向き直って、
「その掃除機に関しては、私もヘンだってわかっているんです! はっきり言ってね、不良品なんです! おかしいんです! 私はねえ、その掃除機で満足に掃除できたことなんて一度もない! クイックルワイパーでゴミを集めて、吸い取る時だけ、その掃除機を使ってんの! そうしないと、使えないの! だから、文句を言うなら、その掃除機を売った電気屋に、文句を言いに行ってちょうだい!」と、怒鳴り返した。
 すると、タコ氏は、文句を言う矛先を、その掃除機を売った電気屋に向けた。タコ氏は、掃除機を担いで、うちから歩いて5分の所にある電気屋に走り、早速文句を言いにいった。
 そしたら、その勢いで、ポンも電気屋に電話をかけて、日頃、その掃除機に感じていたストレスを、電気屋に洗いざらいぶちまけ、
「この掃除機、もう、3年間のうちに、3回も修理出しているんですよ! 明らかに、おかしいですよね。まともに使えたためしだってないんです! はっきり言って、それは不良品ですよ。もう納得できません。返金していただくか、新しいものと交換していただかないと!」と、怒鳴りつけた。
 そしたら、驚くじゃありませんか。その電気屋さん、一晩悩んで、掃除機のメーカーと相談したりした挙句、何と! 全額、返金してくれるといったのだ!
 まあ、電気屋さんや、掃除機メーカーさんが、良心的だったんですねえ。驚きました。こんなこともあるんですねえ。
 タコ氏のキレからはじまった事で、良いような結果に終わった事件は、まあ、これ一件だけだけど。
 しかし、こんなことも、たまーにあるのだ。たまーにはね。